満鉄調査資料第百四篇 満蒙要覧(国立国会図書館書誌ID 000000780218、永続的識別子 info:ndljp/pid/1148381)1929年7月15日、南満洲鉄道株式会社庶務部調査課発行
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第三項 南北満洲の区域
吾等通俗に南満といひ、北満といふも其範囲に関して確然たる者があるのではない。言ふ者も漠然たるのみ、其解釈の区々たる者がある。今其主なる者を挙ぐれば次の如くである。
(一)省の境界に依って区分せんとするもの
(イ)北満…………黒龍江省(面積 三七,七七五方里) 南満…………遼寧、吉林省(同 二七,八四九方里)(ロ)北満…………吉林、黒龍江省(同 五三,七五五方里) 南満…………遼寧省(同 一一,八六九方里)
(二)地勢を標準として区分せんとするもの
北流する松花江と、南流する遼河、鴨緑江の各々流域を以つて南北満洲を区分せんとする者にして其分水嶺は公主嶺附近となり、洮南、長春は北満に入るであらう。
(三)鉄道の勢力圏に依って区分線とするもの
東支鉄道及南満、吉長、四洮各鉄道の後背地を以て各々南北満洲に区分せんとする者であって、換言すれば、日露両国の勢力圏を以て両者の区別をなさんとする説にして、今日の如く露国の勢力駆逐せられたる時に於ては其適否を知るに苦む。
(四)貿易系統に依る区分
大連、営口、安東の後背地を南満としてポグラニチナヤ、満洲里、其他北辺露領貿易市場の後背地を北満とするものである。
(五)旧日露の勢力圏に依る区分
或は巷間伝ふる所によれば一九〇九年日露間に於て勢力圏に関する秘密条約を結んでゐたとの事であるが之に依れば琿春より鏡泊湖を経て、長棚と松花江の会合点を通じ、嫩江松花江の合流点を過ぎ洮兒河より索岳爾済山に及ぶ一線を以て南北二分するものであるから中には南北満洲の標準を之に求むるものである。
要するに此問題は猶未決定の儘に残されて居ると言ふべきである。