資料

新満蒙自由国最高機関の研究

みすず書房「現代史資料(7) 満洲事変」P.356
1932年1月22日、片倉日誌

一、新満蒙自由国最高機関の研究
 午後二時軍令部参謀室長に参謀長、板垣、石原、松井、竹下、和知、片倉各参謀、土居原大佐、花谷少佐会合し松木氏起案の新満蒙国最高機関の問題、人権保護条令、交換覚書に関し研究し大綱を決定せり。
 右案中主として論議せられたる事項左の如し。

  1. 満蒙自由国は飽迄共存共栄在住民一致融和融合して作り上ぐるを主眼とすること。
    即ち日本の領土的野心なるものを含有せしめず。
  2. 参議府の権限に依り国家の最高意思を抑制し諸官庁は技術的のものを除き日本人も内部へ飛び込んで仕事をなす。
    <軍人竝技術者は顧問等に応聘するも可なるも一般官吏は満洲国家官吏として働くことを主眼とす。>
  3. 国防及之に関連する鉄道を日本に依り委託経営す。
  4. 立法院は形式的とし実際は独裁中央集権制とす。
    但し地方自治体は支那古来発達に係る特異自治を助成す。
  5. 国務院の権限を大にし秘書庁に人事予算(主計局)を掌握し之と実業庁には日本人を入るること。
  6. 監察制度を厳にし官公吏の不正を弾圧す。
  7. 交換公文は一方的のものとして依頼の形とし国防及之に伴ふ鉄道管理権等を獲得す。
    之将来国際紛糾に対する言質を与へざるを主眼とす。